第53章 闇からの使者
キュルルルル―――
ヴォンッヴォンッヴォンッ―――
彼がバイクに跨がりエンジンをかけた。
マフラーから勢い良く熱風が排気される。
あたしも、彼の後ろに跨がった。
そして弧を描くように回り、車庫から出ていく。
辺りはまだ暗い。
皆、布団の中で眠っている時間だ。
ヴォンッヴォンッヴォォオオンッ――――
彼は何度か吹かすと、バイクを走らせた。
ゴオォォオオ―――
風の音が耳に響く。
これから何が起きても、恐れるものか。
彼のお腹に回す手に力が入る。
勢い良くバイクは公道に出た。