第53章 闇からの使者
――そういや、親父の様子見に行ってへんかったな。
筋トレを終えた後、汗をタオルで拭きながら加藤は思った。
――どうせ眠へんし、今からでも行こか。
チラリと時計に目を向けてクローゼットに手を伸ばす。
今は午前二時半。
だが、彼の頭に"常識"という言葉はない。
"思い立ったら何がなんでも行動する。"
それが彼の信念だ。
「兄貴…どっか行くん…スか?」
目を覚ました建一が起き上がり、目を擦りながら言った。
「病院や。」
「病院?なんで、こんな時間に。」
建一が首を傾げている。
「親父の様子見に行ってなかったから、今から行くんや」
「えっ、今から!?」
加藤の言葉に建一が驚いていた。
時計を何度も見ている。
「ジブンはおっといていいで?ワシ一人で―――」
「いや、おれも行くッス。」
「さよか。なら準備し。」
加藤は派手なシャツを手に取った。