第53章 闇からの使者
同時刻。
加藤は眠れぬ夜を過ごしていた。
無駄に広い部屋のベッドの上で横になっている。
隣にはピチピチの若い女……ではなく、建一が寝息を立てながら眠っている。
"今日からまたお前が補佐だ"
先程から彼の頭の中では、車の中で宗次郎が言った言葉が木霊(こだま)していた。
"嬉しい"
なんて言葉じゃ言い表せない程の興奮が、時を越えて彼の中にやって来たのだ。
ジッとしていられない。
スエットのズボンしか履いていない彼は、ムクッとベッドから立ち上がりベッドを降りると、床で腕立て伏せを始めた。
「ふっ………ふっ………ふっ……。」
規則正しい呼吸の音。
腕の筋肉が強張り、血管が浮き出ている。
背中に飼っている般若がジッと天井を見つめていた。