第6章 思い出
「家まで送れねぇけど、帰れるか?」
玄関の鍵をかけながら彼が言った。
いつの間にか雨がやんでいる。
「大丈夫だよ。」
「なら、何かあったら電話して。」
「うん、わかった。」
あたしがそう返事すると誠也君は車庫に走っていった。
ブォンブォン―――
彼の愛車のバイクの排気音が響く。
「変なやつについていくなよ。」
車庫から出た彼が言った。
「わかってる。誠也君も無理しないで。」
あたしの言葉にバイクを走らせながら手を上げた。
「……はぁ。」
彼の背中を見つめながらため息を吐いた。
本当はもっと一緒にいたかった。
でも彼を困らせたくない。
それに、今あたしの腕の中には彼の服がある。
あたしは特攻服を抱き締めた。
まるで彼がここにいるみたいでうれしくなった。