第6章 思い出
「ごめん。」
「え…あ…誠也君?」
行為の後、服を着て土下座する彼にあたしは戸惑った。
「守るだの言っといて…俺情けねぇ。」
くしゃくしゃと彼は頭を掻いた。
せっかくのワックスで整われた髪が乱れる。
「でも…あたし幸せだよ。」
と、彼の手を握る。
「…俺も。」
いつも見せないような笑顔で彼は言った。
きっとこの笑顔が見れるのは世界で私だけ。
そう考えると嬉しくてしかたなかった。
「桜…。」
彼の顔が近づいて来る。
あと数センチ。
ブーブー
携帯が鳴った。
誠也君のだ。
「…ちっ…。」
彼は不機嫌そうに舌打ちすると携帯を取った。
「なんだよ?」
やはり不機嫌そうに電話に出た。
そんなにしたかったのかな…キス…。
あたしは彼を見た。
「は?やられた?誰が?」
彼の不機嫌そうな顔が更に怖くなった。
何かあったのだろうか?
「……わかった。今から行くから待ってろ。」
と電話を切った。
「わりぃ…俺ちょっと用事出来た。」
彼はそう言うと急いで服を脱ぎ、上には肌に密着した薄い黒の服を。
下には特攻服を着た。