第53章 闇からの使者
ゴオォォオオ――――
「……なんで夜叉(よそもの)が――。」
同じ頃。
バイクを走らせながら西村先輩は呟いた。
ヘルメットを首にかけ、鼻唄を歌っている。
「あー、俺も女ほしぃ。なんで、誠也にはあんな可愛い彼女が出来んだよ。」
そうぼやきながら坂道を上がっていく。
ヴォンッヴォンッ――ヴォォオオンッ―――
ギアとクラッチを器用に使い、夜空に切れのよいコールを響かした。
彼の十八番、音楽コール。
彼は族の中で一番にコールが上手いのだ。
「いっちょAVでも借りて抜くか……て金ねーや。」
ボリボリと頭を掻く。
「顔とかよー気にしね……いや、どっちかと言うと桜ちゃんみたいな女がタイプなんだけどな――とか言ったら誠也に殺されるわ。」
ハハッと、思わず彼は自分の口から出た言葉に笑った。
「今頃ヤってんだろうな……チクショー羨ましいッ。」
ハンドルを握る手に力が入った。