第6章 思い出
「あの…誠也君。」
「ん?」
「あの特攻服、あたしに貸して?」
壁に掛けてある特攻服を指差した。
「なんで?」
彼は驚いた顔をした。
たしかに、あたしにあの服は必要ない。
だから彼が驚くのも無理ないと思う。
けれど、この時あたしにはある思いが浮かんでいた。
「ちょっと今は言えないけど……ダメかな?」
「………いいよ。」
ちょっと考えて彼は返事をした。
彼がそうなるのも無理ない。
本来、それは着る人の勝負服だ。
ましてや、憧れの人から貰った大切なもの。
迷うのもあたり前だ。
貸してもらえたこと事態が奇跡に近い。
「誠也君の大切なものだから粗末にしないよ。誠也君の大事なものは、あたしにとっても大事なものだから。」
あたしはハニカミながら笑った。
「………その顔反則だろ。」
「…え?」
「わりぃ…無理だわ…。」
そう言って、彼はキスをした。
舌が絡みついてくる。
「ん……。」
そして、そのまま抱き抱えられベッドに押し倒された。