第52章 歯車
「で、山代組の若頭が何でこないなとこにおるんや?」
加藤が腕をくみながら善司さんを見た。
「おどれに関係なかろうがィ。小童(こわっぱ)は黙っとれ。」
悲鳴をあげていた腕を触りながら善司さんが言った。
「なんやて!?この――」
「やめろ、加藤。ここは争うべきではない。」
「………はい。」
宗次郎さんに制された加藤が悔しそうに拳を握っている。
「それで……なにしに来た?」
宗次郎さんは善司さんを見た。
「……髭生やした茶髪野郎が、ワシんとこの車にションベンひっかけよったんジャ。思い出すだけで腹立つわッ!!」
それを言った瞬間、善司さんの額に大量のシワがよった。
「髭……茶髪………堀田辰輝か。」
宗次郎さんが呟いた。
「堀田?誰やソレ?わしゃ、知らんゾ。」
善司さんが首を傾げている。
「……まぁ、話しておくべきか。秋本、お前にも関係あるからな。」
「なんでだよ。」
宗次郎さんの意味深な言葉に、誠也君が首を傾げた。
「……奴は、銀楼会会長の息子でもあり、"夜叉(やしゃ)"という暴走族の六代目総長だ。」