第52章 歯車
「じゅーぶんオッサンやん。鏡見てみィ、目の前に厳ついオッサンおるで?」
振り向いたそこには、ニヤニヤと笑いながらがに股で歩く加藤がいた。
「なんやと?おどれはいっぺんあの世みせたろか?」
誠也君から手を放した男が加藤に向かって歩き出す。
「おぅ、見せてみぃ。あの世でもアソコでも見たろーやないかいッ。」
男の額に加藤の額が触れた。
「いや、兄貴。アソコはダメッス。」
後ろから、茶髪の坊主頭の男が出てきた。
――中学生?
見た目は派手だけどあたしより若く見える。
「さよか。なら(ピー(自主規制))や。」
「いや、悪化してます。」
なんだこの会話は。
まるで、三善先輩がいるみたいだ。
「おどれはやっぱり学がないのぅ。ワシみたいにイケメンで強くて頭のええ男がモテるんジャ。」
男の目が加藤をとらえている。
というか、二人とも近い。
「どこがやねん。ブサメンで弱くて頭の悪いの間違えやろがい。」
加藤も男の目をとらえている。
だから、近いって。
「なら、女何人抱いたか言ってみィ。」
「……ちひろにアユミに……リサに…――。」
「全部風俗嬢やないかィッ。」
男が言った。
唾が飛んでいる。