第52章 歯車
「若ッ!!さっきのヤツがあそこにいますッ!!」
「おう、車止めろッ!!」
激闘の最中。
誠也君達から離れて目を閉じていると、遠くの方から声が聞こえてきた。
思わず目を開けてそちらを見た。
「おどりゃあ、よくもワシの組の車にしょんべんかけやがってッ!!」
黄色い髪の男が走りながら叫んでいる。
その後ろを何人かの人が走っている。
遠くからでもわかる、裏家業の方々。
明らかに、こちらへ向かって来ていた。
「やべぇッ!!ここまで追いかけて来るのかよッ!!」
「はぁ?」
誠也君と堀田さんが声のしたほうへ顔を向けた。
すると、堀田さんは彼等に背を向けて走り出した。
「今日のところは見逃してやるッ!!あばよ、赤助エエェェ!!」
手を振りながら堀田さんが叫んでいる。
「テメェ等、追えッ!!逃がすんじゃねーゾ?捕まえて(ピー(自主規制))ブった切ってやるんジャッ!!」
あたし達のところまで来た金髪の男が、立ち止まって後ろの男達に言った。
「はいッ!!」
力強く男達は返事をすると、堀田さんを追いかけていった。
「……ったく。」
男がゴキゴキと首を鳴らす。
よく見ればこの人、上半身裸だ。
いくら今日暑いといってもこれはない。
後ろに飼っている、不動明王も腕の龍も丸見えだ。
そして、鼻の上の大きな切り傷と喉元の傷が凄い。
短い髪の前髪を逆立てていて、顎には短い髭を蓄えている。
もう何か恐ろしい。
彼を見ていると、いつしかの加藤を思い出す。
彼は背中に般若を飼っていたっけ。
まぁ、この人の唯一可愛らしい所は左目の下にある色っぽいホクロ。
でも、彼のすべてがそれを残念なことにしている。
「ワレもアイツの仲間か?」
ギラリと光る目が誠也君に向いた。