第52章 歯車
「最初から本気でやってたまるかよ。喧嘩は3ラウンド目からが本気なんだよ。1〜2ラウンドは遊びだ。」
そう呟きながら堀田を睨み付ける。
「…それ、ムエタイの話だろーが。」
堀田が頭を掻いた。
「んなもんしってらぁ。俺の喧嘩はそうなんだよ。」
「学ねぇくせにそーいう知識は働くんだな。」
「ごちゃごちゃごちゃごちゃうるせー……」
ガシッ―――
グシャアッ―――
「ブァハッ―――」
「…んだよッ!!男なら黙って……。」
「……っせぇな。」
バコッ―――
バコッ―――
バコンッ―――
「ぐふっ―――」
怯んだと思った堀田の拳が連続して顔に入る。
顔の中に拳がめり込んでくるようだ。
「………っ…。」
思わずよろめいた。
―――どうする俺?ハンパねーぞコイツは。
キレた口角から出る血を拭う。
―――遊びとか言ってらんねーわ、マジで……。
拳を握った。