第52章 歯車
「なら、今日からまたお前が補佐だ。」
「え?」
「俺の後ろで組を守ってくれ。」
加藤は、宗次郎の口から出た言葉に驚いた。
つまり、"若頭補佐"になれと言っているのだ。
「はいッ!!」
彼は胸が高鳴るのを感じた。
地位を取り戻したとかではなく、純粋に"兄貴の後ろに着いて行ける"と、そう思ったからだ。
「俺、兄貴の側で一生ついていきますッ!!」
加藤が握り拳を作った。
「俺も兄貴と兄貴の兄貴……えっと――」
「わかがし。」
「わかがしについていきます!!」
加藤に助言されながら建一も握り拳を作った。
「そうか。」
宗次郎は再びクスリと笑った。
「兄貴、誰かもめてる。」
ふと窓の外を見た建一が言った。
「どうせ若いやつらがじゃれおうとるだけやろ。」
加藤は興味無さそうに目を向けた。
「あ、あれ秋本といつしかの嬢ちゃん。それに、アイツ!!」
すると、加藤の眉間にシワがよった。
「アイツ?」
宗次郎もブレーキをゆっくりと踏み込み歩道に車を寄せ、そちらを見た。
「アイツは…――。」