第51章 溺れた者と再来
「だーかーらー、しらん言うてるやろッ!!」
バンッ―――
取調室の椅子の上で加藤は叫んだ。
机を激しく叩いている。
「では、あの部屋の死体は何?あなたが殺したんじゃないの?」
目の前の者が呟いた。
彼は今、丸暴の取り調べを受けている。
しかも、女。
ここまで前と一緒となると、ある意味恐い。
加藤は寒気を催した。
「奴等が勝手に死んだんや!!借りた金も返さんでな!!被害者はワシ等やで!?なんでこないなこと――」
バンッ―――
「黙り!!」
女が激しく机を叩いた。
「あんたら――。」
「"極道が民間人苦しめてるゆうのに、何が被害者や!!笑わせるんじゃないっ!!"…やろ?台詞まで一緒となると恐いわッ。」
―――ホンマに。
鉄格子の窓を見た。
遠くで鳥が飛んでいる。
「たれ込みがあった。アンタ等が殺したっ…てね。」
女がジロリと加藤を見た。
いまだ彼は窓の外を見ている。
「さよか。」
加藤が小さく呟いた。
―――はめられたっちゅうわけやな。
彼の眉間にシワが寄る。
普通に考えれば松下だ。
けど、タイミングよく現れた堀田という男。
そして、あの頃と全く同じ形状の死体。
なにかがおかしい。
何かとんでもないことが裏で起きている。
それよりもケンは大丈夫だろうか。
加藤は考えていた。
ガチャ―――
他の警察官が入ってきた。
そして、女に耳打ちする。
すると、女は溜め息を吐くと、
「釈放よ。」
そう言った。