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レッテル 1

第51章 溺れた者と再来




今、組の構成員の中で強いのは加藤だ。
信頼できて側に置いて置きたいのも加藤だ。
いつの間にか、自分の知らないところで、補佐が松下に代わっていた。
以前確かに松下とは"加藤が失態を犯したとき松下を補佐にする"と約束したが。
だが、本当に自分の身近に置くものを信用出来ない松下にしても良いのだろうか。

宗次郎は、自分の車を運転しながら考えていた。

加藤の失態というのは、"秋本との件"だろう。
それは、分かっていた。
自分に対する派閥の事も。
だから、ヤツには少し昔の気持ちを思い出させるのにいい機会だと思った。

しかし、そろそろ加藤には自分の元に戻ってもらう必要がある。
だからこそ、今日一人で出向いた。
ヤツと話をするために。

「………心配性だな、うちの組の者は。」

ルームミラーを見ながら宗次郎は呟いた。
黒のランクルが車間距離をあけて着いてくる。
ナンバーが組の者の車のものだ。
彼はクスリと笑うと車線を変え道を曲がった。
車一台やっと通れる細い路地をアクセルを踏み込み飛ばして行く。
遅れてランクルが入ってきた。
それを確認すると、ブレーキを器用に使い道を出てハンドルを右に切った。

キュルルルルル――――

ズササササ――――

タイヤが地面を擦る。
摩擦熱で車を隠すように煙が上がった。
そのうちに道を飛ばして走っていく。
気付けばもう、後ろにランクルはいない。

"うまく撒けた"

そう思いながら煙草をくわえた。

彼等について来られては困る。
話の支障になるから。



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