第51章 溺れた者と再来
「堀田辰輝。…アンタは?」
「加藤道信や。」
「岩中組の人?」
「だったら何や?余所者がなんのようや?」
「ふーん。」
頭から爪先まで堀田は見た。
「ただ者やなさそーだな。取りあえず金貸して。」
堀田が手のひらを出した。
「はぁ?なんでワシが今日初めておうたヤツに金貸さなアカンのや。」
訝しげに加藤が見ている。
「だよなぁ……ならくれよ。」
「ええよ……ってちゃうやろッ!!」
堀田の言葉に加藤がノリツッコミを入れた。
「アンタ、おもしれぇな。」
「せやろ?……で、何しに来たんや。」
加藤が鋭く堀田を見た。
―――こんな事をしている場合やない
わかっていても経験という名の嗅覚が、何かを感じとっている。
「あー、それ聞いちゃう?若頭といい岩中組は常識ないヤツばっか?」
「なんやて?」
加藤の眉間にシワが寄る。
「普通、余所から来たら歓迎すんだろ。」
顎をしゃくれさせながら、堀田はまたボリボリとお腹を掻いた。
「そんなん知らん。ワシ、忙しいんや。やけん、もう行くわ。」
震える建一の手を掴み、堀田の横を通り抜ける。
シュッ――
バシィ――
「なんやねん、おどれは。」
が、急に堀田が殴りかかってきた。
直ぐに、片手で加藤が拳を受け止める。
その腕がワナワナと震えていた。