第51章 溺れた者と再来
「ハァハァハァハァ………。」
建一を抱えいた加藤は、ごみ山の間にいた。
物凄い勢いで四階から階段を経て降りたため息を切らしている。
一方の建一は、初めての光景に、いまだに目を見開いていた。
小刻みに震えている。
まるで、あの時の坂下と同じように。
「ケンッ、自分を見失ったらアカンッ!!この仕事についたら一度は経験することなんやッ!!」
建一の肩を必死に揺らして、加藤が叫んでいる。
「なーんか、ここくっさいなぁ。」
そんな時、後ろから声がした。
「誰やッ!!」
加藤が振り向く。
「いやぁ、俺さぁ隣の県から来たんだけど道に迷っちゃって……アンタこの団地の人?」
口の周りに短い髭を蓄えた茶髪の男が、ボリボリとお腹を掻いた。
「んなわけあるかいッ!!だから誰やねん、おどれはッ!?」
加藤は激しく男を睨み付けている。