第6章 思い出
「欲しいもの?」
学校の帰り道。駅に向かう途中であたしは誠也君に聞いてみた。
同じ傘の中で彼は考え込むように目を閉じた。
「ねぇな。」
そう応えると彼は煙草をくわえた。
えーーー!!
心の中で叫ぶ。
「あ…でも。」
彼はライターを取りだし煙草に火をつけた。
うんうん。
あたしは次の言葉をまった。
「そろそろ新しい特服にしねーとなぁ。あれもう血が染み付いてよ。この間破られたし…。」
煙をはきながら彼はブツブツと言っていた。
全然ちがーう!!
あたしは再び心の中で叫んだ。
「でもアレ大事なんだよ。憧れの人から貰ったやつだから。だから…何とかしてぇな。」
彼は悲しそうに笑った。
「憧れのひと?」
「そ。でももう……消えちまったけどな、幻みてぇに……。」
「……。」
あたしは、悔しそうに唇を噛む彼を見ると何も言えなかった。