第51章 溺れた者と再来
「なんでこの前、男と手繋いでたんだ?」
授業中。
何故かずっと振り向いている松崎君が呟いた。
もう何かクラス替えしたい。
が、この学校はクラス替えというものがない。
つまり、三年間クラスが一緒というわけだ。
ホントに特殊すぎるよ、この学校。
でも、仲の良い友達とずっと一緒ってのは最高だ。
「聞いてんのかよ、ブスッ。」
不貞腐れたように松崎君が見ている。
「だから、何度も言った通り…知らないってば。てゆうか、あたし彼氏いるし、松崎君には―――」
「そんなん知らん。俺が好きなんだから、お前は早く俺を好きになればいいんだ……よッ。」
「いたッ。」
彼があたしの額にパチンッと指で弾いた。
あたしはそこを押さえる。
地味に痛い。
「つうかさ、極死天馬この前爆鬼と揉めたんだって?」
「なんで知ってるの?」
「先輩から聞いた。」
「先輩?」
「言ってなかったっけ?俺の先輩も族の幹部なんだよ、流死亜って族の。」
彼が口に緑色のガムを放った。
流死亜?
聞いたことない名前だ。
「俺もいつか流死亜に入れてもらうんだ。手嶋(てしま)さんの後輩として。」
ニイッと無邪気に笑った。
こういう時の彼は本当に良いと思う。
でも吉田君をいじめるのは――
チラリと隣の吉田君を見た。
あ……。
吉田君と目があった。
でも直ぐに反らされる。
なんだかそういうのって寂しい。
「吉田見てんじゃねーよ。」
ガムを噛みながら松崎君が吉田君を睨み付けている。
まだ、彼は続けているのか…いじめを。
"ガキなんだよアイツは"
前、誠也君が言っていた事を思い出した。