第50章 魅惑の仮面
ゴクゴクゴクゴク――――
彼の中にお酒がまるで水のように流れていく。
それが何度も何度も続いた。
護衛はある言葉を言いたくてたまらない。
"飲み過ぎ"
だと。
でも、それを言えば彼の逆鱗(げきりん)に触れてしまう。
そうなれば何をされるか分からない。
ましてや酒を飲んでいる。
リミッターが解除されている――いや、彼に元々リミッターなどない。
だが、酔った江田は更に恐ろしいということを彼等はしっているのだ。
「岩中の頭やられたんだ……次はあのクソ若が出てくる。」
不気味な笑みを交えながら江田が呟いた。
「クソ若?」
レイカが不思議そうに彼を見ている。
「三下が外のマフィア連中にしっぽ振ってからに……ムカつくんじゃアイツは………昔から。」
再び酒に手をつける。
「涼しい顔でワシの前を立ちおってからに…。」
彼の眉間にシワが寄る。
「知り合いなんですか?」
レイカが尋ねた。
「知り合い?……違うわ。ただの……いや、暇潰しの道具や」
「………。」
一瞬、レイカの額にシワがよった。
だが、本当に一瞬過ぎて誰にもそれは分からない。