第50章 魅惑の仮面
あの子はどこかで見たことがある。
いや、過去に会った記憶がある。
不確かだが、何かがそう叫んでいる。
ジッと車から見える窓の外を白河は眺めていた。
「組長、本当に江田組の――。」
「言うな。いつ、どこで盗聴されているかわからん。」
「すいません。」
運転している男がルームミラー越しに頭を下げた。
「……あの件はここだけの話だ。他言したらどうなるかわかっているだろうな。」
白石が威圧的にルームミラーを見た。
「は…はい。」
目があった男は、タラリと額から汗が垂れる。
妙な緊張感が車内に満ちていた。
「………。」
そして、再び窓の外を眺めた。