第50章 魅惑の仮面
「白河和真?」
彼を見た。
「あぁ…、白河組の組長……西條会の直参だ。」
「直参?」
「直系組織の組長の事だよ。」
「直系って?」
「なんつーか、西條会とかそう言う中核団体があんだろ。その会長の直接の弟分や子分が組長をしている組織のことを言うんだよ。」
「へぇ……。」
あたしは納得したように頷いた。
極道の世界がどういう風なのか分からないけど、いろいろちゃんと役割があるんだ。
走り去っていく黒い車を見つめる。
「あいつは…一代で組作って多額の金を動かしてんだ。まぁ、金庫番ってヤツだな。頭のキレも半端ねぇ。」
彼がコーヒを飲んだ。
「なんでそんなに詳しいの?」
「なんでって……あいつは有名だったから。」
「有名?」
「……アイツもともと馬場団地の人間なんだよ。」
「え……。」
驚いたように彼を見た。
馬場団地と言えばいい噂はない。
まともな大人はいないし愚かな大人の被害を全て子供が被っている。
こういう言い方は良くないのかもしれないけど、そこで育った人が裏の世界で偉くなって金庫番まで任されるなんて凄い事だ。