第50章 魅惑の仮面
「……やってくれるか?」
「………はい。」
彼の言葉に、目を反らさずに宗次郎は答えた。
自分は組を守りたい。
親父が動けない今、組を守る砦は自分が担うべきだ。
構成員を束ねてしっかりと導かなくては。
彼の中での決意は固かった。
"復讐"
それよりも、今はこれ以上被害を増やさないことに専念しよう。
いつも、冷静な彼はこういう時も冷静でいれる。
色んな事を乗り越えて来たからこそ出来ること。
それが彼の良いところだ。
「……安心した。君が冷静でよかったよ。」
フッと笑うと白河は灰皿に煙草を押し付けた。
「やっぱり君を選んだ俺の目に狂いはなかった。極道には山代組長みたいな人ばかりじゃなくて、君みたいな人間も必要なんだ。」
そこまで言うと白河は立ち上がった。
「すまない。もう少し居たいが、仕事が立て込んでてね。これから会わなければいけない人がいる。」
「いえ、こちらこそありがとうございました。」
急いで煙草を灰皿で揉み消すと、立ち上がって宗次郎は頭を下げた。
「いや、気にするな。……じゃあ、失礼する。」
そう言うと、白河は喫煙室を出ていった。
「……代理か……。」
宗次郎は小さく呟いた。