第50章 魅惑の仮面
「俺も原田組長の意見に賛成です。」
今まで黙っていた男が呟いた。
短い髪をオールバックにセットし白い線の入ったスーツを着ている。
胸元の金バッチがキラリと光る。
彼は、西條会若頭補佐兼、直系白河組組長の"白河 和真(しらかわ かずま)"だ。
歳は三十歳。
幹部のなかで一番若い。
「ガキが口出すなヤ。」
山代が彼を横目で見ている。
「ガキ?まぁ、この中では一番若いですが西條会を思う気持ちはあなたに負けてるつもりはないです。……実力もね。」
顔色を変えずに白河は淡々と言った。
「なんやと?ワシに喧嘩うっとんのかッ!?おどりァ、なめくさってからにッ!!」
山代が唾を飛ばしながら立ち上がった。
「やめんか、いまはそういう問題じゃない。岩中の件についてだ。」
「……クソッ。」
気迫のある声で西岡が山代を制した。
山代はまだ何か言いたそうだったが、ひとまず椅子に腰かけた。
「……で、話続けてもいいですかね?」
「かまわん。」
白河の言葉に西岡が頷いた。
「先程も言った通り、原田組長の意見に賛成です。が、今は入院している岩中組長の代わりを置くのが先決では?」
「どういうことだ?」
中嶋が彼をジロリと見た。
「今の状況では、岩中組を指揮するものがいません。それでは、構成員を上手く動かせるとは思えないんですよ。実際、西條会の構成員が一番多いのは岩中組ですし、もし抗争になって彼等が身勝手な真似をするとまずいのでは?」
「……確かに。」
山代以外の人間が納得したように頷く。
「そんなのうちの組には関係ないわッ!!岩中組は数が多いだけやろがッ!!頭やられてもなんもできんよーなヘタレ――。」
「では、あなたの組だけで豪龍会に立ち向かえるとでも?」
吠える山代を鋭い目付きで白河は見た。
威圧感がある。