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レッテル 1

第50章 魅惑の仮面



翌朝。

"昨夜9時頃○○県○○町の公道で発砲事件がありました。被害者は一名で意識不明の重態で犯人は未だ逃走中。いずれも暴力団関係者の―――"

「これってすぐ近くだよね。」

バターをたっぷりと塗ったトーストをかじりながら、あたしは言った。
今日は祭日だ。
だけど、珍しく早く目が覚めた。
だって今日は昨日のデートがダメになった分、たっぷりと買い物に付き合ってもらうのだから、遅くまで寝てはいられない。

「あぁ。」

そう頷くと、パンを食べ終えた彼がコーヒを飲んでいる。

「最近物騒だよね、昨日も事件あったし戸締りとか気をつけてなくっちゃ。あ……勇人君にも帰ってきたら遅くに外に出回ないように―――」

「お前はあいつの母ちゃんかよ。心配すんな、あいつなら大丈夫だ。俺の弟だからな。」

「いや、そういう問題じゃ……もういい。」

そこまで言うとあたしは口を閉じた。
笑って言う彼を見ると、これ以上言うべきでないと思ったからだ。
「つーか、また準備に一時間とか勘弁してくれよ。」

困ったように彼が寝癖のある垂れた髪を掻いた。

「さぁ、どうだろ?」

「待つこっちの身にもなれよ、つーか化粧してもかわんねーしよ。」
「それ、どういう意味?」

ジロリと彼の顔を見る。

「なんつーか……そのままでも可愛いってこと。」

恥ずかしそうに彼が顔をそらしながら言った。


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