第49章 龍の刺青
カチャ―――
「桜…?」
目を閉じてすぐ、部屋の扉が開いた。
彼だ。
ゆっくりとあたしに近付いてくる。
それは足音で分かった。
「……寝てんのか?」
彼の手があたしの身体に触れる。
――くすぐったい。
布で隔てた壁も意味のないくらいに彼を感じる。
トクンッ――トクンッ―――
心臓が大きく高鳴る。
ただ触れられているだけ、それだけでこうなるなんて重症だ。
「……ごめん。」
彼の謝る声が小さく聞こえてきた。
――彼は今、どんな表情をしているの?
顔を埋めているため分からない。
「……お前を守るって言ったのに…傷付けてばっかりで――。」
違う。
それは、あたしの方。
本当に傷付けているのはあたしなのに―――。
枕を掴む手に力が入る。
「やっぱり…俺にはお前とおる資格ないんかな……。」
ズルい。
ズルいよ。
そんなの。
一緒にいようって言ったのはあなたなのに。
資格とか関係無いって言ったのはあなたでしょ。
なら―――
最期まで一緒にいてよ。
ちがう、
いたいの……あたしが。