第49章 龍の刺青
「お前も色んな女抱いてみろ。いい経験になるぞ?」
「絶対に嫌だ。俺は最初から最後まで桜としかしねぇって決めてんだよ。」
「でも、桜ちゃんはそうとは限らないぞ?」
グサッ―――
心に矢が刺さる。
不本意ながら痛い所を突きやがる。
そんなこと言われなくてもわかってる。
「可愛いからぁ……男がほっとかないだろうなぁ。」
チラチラと此方を見ている。
グサッグサッ―――
次々と矢が刺さる。
白石の時の光景を思い出した。
彼女を抱くことでずっと心の奥にしまっていた苛立ち。
白人野郎の時も、考えないようにしていた。
―――彼女はもう他の奴と……。
思い出すだけでムカついてくる。
彼女にたいしてじゃなくて、自分自身にたいして。
どうして早くいかなかった?
いや、それよりも彼女を守りぬけなかった?
一番傷ついて来たのは彼女だ。
なのにいつも笑ってる。
"ありがとう"
そう言って、俺の一番好きな、俺が惚れた笑顔のままで笑ってくれている。
どんな怖い目にあっても、傷つけられても。
ますます、彼女が愛しくなった。
彼女を守りたい。
あの笑顔を守り続けたい。
自然と足は二階へ進んでいた。
「若いねぇ。」
後ろから声がした。