第49章 龍の刺青
「いやぁ、二度も助けてもらうとか…ほんと運命だよな。」
コンビニで買ってきたパンをかじりながら堀田さんが言った。
「こんな運命あってたまるかよ。」
パンダの置物に腰かけている誠也君が煙草に火を着けた。
今、あたし達はさっきの所から近い公園にいた。
不良が結構いて居づらいが、彼等は気にしていない。
「お腹空かせて倒れていたなんて……本当大変でしたね。」
「桜ちゃんは優しいね。お兄さん惚れちゃいそうだよ、可愛いし。」
堀田さんが潤んだ目であたしの目を見た。
「…ちょっと待て。」
すると、唸るように誠也君が口を開いた。
「あ?んだよ、赤助。」
先程とは全然違う目で堀田さんは彼を見た。
「朝の二千円はどうした?」
「あぁ、あれ。パチンコで一攫千金狙ったけど…負けちゃった。てへッ☆」
堀田さんが舌を出している。
「テメェは一回餓死しろッ!!」
「誠也君そんなこと言っちゃダメだよ。」
「そうそう。」
最後の一口を口に放ると立ち上がった。
ゴオォォォオオ――
その瞬間強い風が吹く。
上着を脱いでいた堀田さんの薄い黒の長袖のシャツが波打つ。
「あ……。」
一瞬だけど彼の背中に飼っている生き物が見えた。
――龍。
それも青い目の大きな龍。
座っていたからこそ見えた。