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レッテル 1

第49章 龍の刺青



「いやぁ、助かったよ。」

渡したハンカチで顔を拭きながら男が笑っている。
綺麗に拭き終えると、男の人はハンカチを返してきた。

「いいえ、どういたしまして。」

あたしは笑顔でそう言うと、ハンカチを鞄へしまう。
隣で煙草を吸う彼は、訝しげに男を見ている。
それもその筈。
綺麗になってみれば、男の人は結構若かった。
口の周りの短い髭が歳を感じさせるが全体的に若く感じる。

「俺、堀田 辰輝(ほった たつき)。こう見えても20なんだ。だから、おじさんじゃないよ。お兄さんてやつ?」

茶色の髪を掻きながら堀田さんは笑っている。

「あ、あたし朝日 桜です。」

「そっか、そっちは?」

「なんで教えなきゃなんねぇんだよ。」

「じゃあ、赤助な。」

「絶対イヤだッ!!」

彼は煙草を噛みながら堀田さんを睨み付けている。

「つか、赤助。おれさホームレスじゃねぇんだわ。だから、"ホームレスの誇り"だっけ?んなもんねーわ。」

「じゃあ、なんでゴミ漁ってんだよ、テメーは。」

「いやぁ、話せば長くなるんだけどさ……煙草一本くれる?」

「なんでだよ!?自分で買えよッ!!」

「金ねーんだよ、察しろよ。」

「図々しいなアンタッ!!」

と言いつつも彼は煙草を出した。

「わりぃな、……火。」

「いちいちうるせぇなッ!!」

ジッポーを取り出して火をつける。

「まぁ、怒るな。」

堀田さんは口から煙を吐き出した。





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