第48章 神影
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県南部のとある町の裏道に沿う某ビル。
その中には豪龍会直系江田組の事務所がある。
それをとある男が見張っていた。
ホームレスに扮して。
この辺いや、この県では多くのホームレスが沢山いる。
だから、組事務所の前にホームレスがいようが何ら珍しくない。
モグモグモグ――――
ゴクゴクゴクゴク―――
見張りといえば、あんパンと牛乳。
特にあんパンはつぶあんに限る。
誰がそんなことを決めたのだろうか。
昔の刑事ドラマの見すぎだ。
男は腹ごしらえを終えると地面に腰を着いた。
最もホームレスらしく見えるように。
「あんたも、仕事がなくなったくちかい?」
暫くすると、男は本物のホームレスに声をかけられた。
「え?……あぁまぁ。」
曖昧に答える。
「そうかい、若いのに大変だねぇ。」
そういうと年老いた白髪混じりの無精髭のお爺さんは彼の横に腰掛けた。
「お爺さんはいつもここにいるんですか?」
事務所に目を向けながらも尋ねる。
「そうだよ。ここは食料がよく手にはいるからねぇ。ほら、あそこにごみ捨て場があるだろ?」
そう言ってお爺さんは男の方を指差した。
そちらへ顔を向ければ確かにあった。
「なら、この辺のこと詳しいんですか?」
お爺さんの方へ顔を戻すと、再び尋ねる。
「あぁ。」
「なら、そこの組のことわかりますか。」
男は、事務所を指差した。