第48章 神影
「桜……――」
彼が後ろから抱きついてきた。
当たる。
当たってる…ナニが。
「くっつかないで――」
彼から身体を離す。
「なんで?」
不機嫌そうに彼が言った。
「だって―――」
口を閉ざす。
彼の顔が見れない。
「俺の事嫌い?」
アザだらけの顔があたしを見ている。
「……好きだよ。」
そう言っても彼の顔が見れない。
「俺も。」
彼のゴツゴツとした指が、濡れたあたしの髪に触れた。
トクトクと胸が波打つ。
頬が熱い。
湯気のせいじゃなくて彼からの熱のせい。
「桜……。」
再び彼があたしを呼んだ。
次は何が来るのだろう。
胸が高鳴る。
「俺はお前の足がモデルみてぇに長くねぇでも好きだ。」
ムカッ―――
パシンッ―――
「ぶッ――。」
あたしは彼の頬を叩いた。
彼はたまに無神経すぎる所がある。
でも、さすがにムカついた。
一番気にしてたのに――。
「なんで……?」
彼が頬を押さえてこちらを見ている。
「………。」
あたしは頬を膨らましながら、浴室を出た。