第48章 神影
「つまらん、つまらんわッ!!」
頭から手を離した江田が叫んだ。
「誰か、岩中のクソ若の首持ってかえってこんかいッ!!ケツ割りばっかしてからに、金筋もんはおらんのか!!ワシの組はッ!!」
ガシャンッ―――
パリンッ―
テーブルを激しく叩く。
床にグラスの破片が散らばった。
「――すみません江田様。」
ボーイが急いで片付ける。
グシャ――
バリバリバリ―――
「ぎゃあぁぁああ!!」
ボーイが悲鳴を上げた。
江田が破片を拾うボーイの手を踏みつけたのだ。
破片が手のひらに突き刺さる。
血がジワジワと滲み出た。
「クッククククク…………。」
江田はそれを見て笑っている。
周りの者はさらに脅えた。
「こうなりとうなかったら、斬り込みでもカチコミでもなんでもしてこんかいッ!!」
ヘラヘラと笑っている。
悪酔いだ。
部下たちは分かっていた。
が、どうしようも出来ない。
ボーイに情けの視線を当てる。
もうあの手は当分使い物にならないだろう。
運悪く酒に酔った彼の前で破片を拾ったばかりに。
でも、彼は明日になるとその事など微塵も覚えていないだろう。
本当に可哀想な事だ。