第48章 神影
「……紅の狂犬…か。」
代わり行く景色を車の後部座席から眺めながら、宗次郎はポツリと呟いた。
「紅の狂犬?」
護衛の男が訪ねる。
「いや…なんでもない。」
彼はそう言うと、懐から写真を取り出した。
ニッコリと笑う少女の写真。
そっと写真の顔をしなやかな指使いでなぞる。
「………。」
ジッと見つめると、彼は再び懐にそれをしまった。
いつも彼はその写真を持ち歩いている。
片時も離さずに、大切に。
「なんの写真ですか?」
運転している男がルームミラー越しに宗次郎を見た。
「お守りみたいなものだ。」
そう言うと、再び宗次郎は窓の外へ目を向けた。
「はぁ…?」
男が首を傾げる。
良く分からないと言う風に。
彼等がその意味を知るのはずっと後の事か、はたまた知ることは一生無いかもしれない。
宗次郎はゆっくりと目を閉じた。