第48章 神影
――誠也君があんな人だと思わなかった。
ダイニングのテーブルについて入れたてのコーヒーを喉に流す。
小学生に卑猥な事を教えてどういうつもりだろうか。
カップに入ったコーヒーから上がる湯気のように、あたしの頭からも怒りで湯気が上がってしまいそうだ。
「どうしたん、姉御。」
二階から降りてきた勇人君が、冷蔵庫から牛乳を取り出してコップに注いでいる。
最近、彼は良く牛乳を飲む。
大きくなるためらしい。
「……ちょっとね。」
言葉を濁す。
「もしかして、兄貴の事?」
ドキッ―――
鋭い。
ソファーに座ってテレビをつけた勇人君が呟く。
あたしは焦りで胸を高鳴らせた。
「なんで?」
「ベッドに顔埋めて動かねーから。あーいう時の兄貴は絶対姉御となんかあった時なんだよね。」
子供というのはどうしてこうも良く見ているのだろうか。
いや、あたしもまだ子供だけど―――
コーヒーを啜る。
スタ…スタ…スタスタスタ――
すると廊下の方から物音がした。
泥棒のような足音をたてながら何かが廊下を歩いている。
きっと彼だ。
そして、影がチラチラとドアのガラス窓から部屋を覗いていた。
まるで、某アニメの再現ででる犯人のようだ。
思わず笑ってしまった。