第45章 忍び寄る魔の手
――見つかった。
目の前に、不気味に笑う辰川の顔が。
血が滲んだ痕がある手がどんどん伸びてくる。
あたしを掴まえようと。
後ろに逃げようにも壁がある。
「ハァ…ハァ…ハァ…やっ―――」
ガシッ―――
とうとう、手を掴まれた。
ズルズルズル――ガタガタ―――
彼の方へ引きずられる。
『―――――――!!』
電話の向こうで彼が叫んでいるが聞こえない。
「やめてッ!!離してッ!!」
ベットの下から連れ出された。
上から笑いながら辰川が見下ろしている。
「なんでェ?楽しいじゃん。」
彼はそう言うと、もう一人の男にあたしを担がせた。
「いやッ!!」
必死に抵抗する。
「ヒロ、携帯もってんぞ?」
「貸して。」
携帯を取られた。
「電話しちゃダメ。」
そう言って、通話を切られた。
恐怖で涙が溢れてくる。
毎度毎度の事だけど、あたしって本当に運が悪い気がする。
いや、そんなことよりも――
「離してッ!!触んないで!!気持ち悪いッ!!」
バシバシと男の背中を叩く。
「あのさ、俺何気に傷付くんだけど。」
ナイーブな男が階段を降りながら言った。
「どんまーい、ノブちん。」
後ろで辰川が笑っている。
そんな彼をあたしは涙目で睨み付けた。