第45章 忍び寄る魔の手
いったい、どうしたのだろうか。
何かあったのか?
それとも、俺がいないから心配になったのだろうか。
とりあえず、かけ直してみる。
プルルルル――プルルルル――
二回目で彼女が出た。
「さっきの電話どうした?気づかなかっ―――」
『みいつけたァ――』
『きゃあぁぁぁああ―――』
「桜ッ!?」
突然、男の声が聞こえてきたかと思うと、彼女の悲鳴が聞こえてくる。
"ズルズルズル――ガタガタ――"
そして、引きずられるような音。
「桜ッ!!どうした――桜ッ!!」
声を張り上げて彼女を呼ぶ。
『やめてッ!!離してッ!!』
『なんでェ?楽しいじゃん。』
『いやッ!!』
"ダン―ダン―ダン―バタンッ――"
ブチッ―――
プープープー
彼女が抵抗する声、男の声、足音、そして…ドアを閉める音。
それ等が聞こえてきたかと思うと強制的に電話を切られた。
耳に残る機械音。
サァ――と全身の血が引いていくようだ。
――やっぱり家に残して行くべきじゃなかった。
それに、あの男の声は聞き覚えがある。
それも、最近。
誰だ。
イアンとかいう金髪やろうじゃ――金髪?
"辰川"!?
アイツだ。
あの馬鹿っぽいしゃべり方、間違えない。
辰川弘敏だ。
なんでアイツが家に――いや、今はそれどころではない。
早く家に帰らないと。
殴り合う兵隊たちを避けながらバイクまで走った。