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レッテル 1

第45章 忍び寄る魔の手



部屋のドアをゆっくりと閉め、寝ていた部屋に戻る。

クローゼットに隠れるべきか……。

そう考えたが、すぐにバレる可能性が高い。
あたしは辺りを見渡した。
隠れる場所がないかと。

ダンッ――

すると、窓の外から音がした。
ベランダからだ。
カーテンが閉まっているので外が見えない。

"ほらぁ、ノブも早くおいでー。"

「……ひっ―――」

声が聞こえてきた。
間近から。
悲鳴をあげそうになった。
間違えない。

"辰川"だ。

もう、時間がない。
いつ入って来てもおかしくない状況だ。
咄嗟にベッドの下に隠れた。

「ハァハァハァ……。」

乱れる呼吸。

ドクドクドクドク―――

煩く暴れる心臓の音。
恐怖でどうにかなってしまいそうだ。

"おっじゃましまーす。"

"うるさいって"

玄関の方から声が聞こえてきた。
足音達がゆっくりと忍びよってくる。
初めは廊下に。
そして、階段。

ギィ――ギィ――

床が軋む音が聞こえる。
まるで悪魔の足音。
それに、迷いがない。
確実にこっちにやって来る。

"どっち?"

"うーん、こっち。"

どうか、勇人君の方には行かないで。

神様お願い。

震えながら願った。

自分は、どうなってもいいから勇人君だけは助けたい。
今まで、彼はいっぱい辛い思いをしてきた。
だから――
……だからお願いします。

携帯を両手で挟むように手を合わせた。


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