第45章 忍び寄る魔の手
「ここら辺じゃないか?」
バイクを止めた晴山が振り向いた。
「しらなーい。……でも、あそこに青い屋根がある。」
外灯しか明かりがない真っ暗な道で辰川が指差す。
「なんでわかんだよ。」
「勘。」
「あのなぁ。」
晴山が頭を掻いた。
とりあえず、バイクを置いて鍵を抜くと、辰川が言っていた家に近寄る。
表札に"秋本"と書かれている。
「ビンゴ。ヒロ君すごい?」
ニコッと笑っている。
「いや、恐ろしいわ。超能力者かよお前は。」
「バンドパワー。」
「ちげーだろ。」
バンッ――
彼等が話していると二階の窓から微かに音がした。
「お姫様は二階ニャ。」
辰川が猫の真似をした。
「どうやって行くんだよ。玄関の鍵しまってんぞ。」
華麗にスルー。
「ヒロ君ショック。」
踞って地面に絵を書いている。
「なんだそれ?」
「ノブ。」
「はぁ?」
土の上に描かれた豚を見ながら晴山は頭を掻いた。
彼は決して太っていない。