第44章 爆鬼
PM11:25
ヴォンヴォンヴォン―――
暗い夜道に排気音が鳴り響く。
紫の特攻服を羽織った若者二人がバイクに跨がりジグザグにノロノロと走行している。
今日は、集会の日ではないが、彼等は特攻服を着ていた。
理由なんてない。
ただ、着ているだけなのだ。
「姉御がもしよォ――」
ハンドルを握る茶髪の男が口を開いた。
「あ?」
後ろの三段シートに身を預けてる黒髪男が鉄パイプを引きずった。
耳を塞ぐような金属音が辺りに響く。
「木刀もって"覚悟しな"とか言ったらヤバくね?」
「ヤバイって?」
「興奮するって事だよ。」
「まぁ…確かにな。」
納得したように黒髪の男が頷いた。
「だってさァ、あの顔にあのスタイルだぜ?胸、ボンッ…マジたまんねェ!!」
ヴォンヴォンヴォン―――
興奮してバイクを吹かした。
「お前、総長に殺されんゾ?」
呆れた様に、黒髪の男が頭を掻いた。
「分かってんだけどよ…男のマロンってヤツ?」
「ロマン。」
「あ、そうそうソレ――――」
キュウゥゥゥウウ―――
言葉の途中でバイクのブレーキを思いっきりかけた。
そのせいで、バイクが倒れそうになる。
「――っねぇ!!どうしたんだ、急に!?」
後ろに乗っていた男が何とか倒れずに持ち堪えた。