第43章 女顔の男
「どうしたの、震えてるけど?」
白々しく辰川が言った。
ムカつく。
あたしは、靴の踵で辰川の足を踏んだ。
「気分悪い?」
彼の反対側の手が腰に伸びた。
「何してんだ、テメェ!!」
ようやく彼が気づいた。
彼があたしの腕を掴み引き寄せる。
「えー?別に何もしてないよ?」
「今、桜の鞄に触ろうとしてただろ!!」
「は?」
全然ちがう!!
そっちじゃなくて――
涙目で彼を見上げる。
「え?鞄?鞄はしらないニャ。」
辰川はニコニコと笑いながら首を傾げている。
やっぱりこの人は危険だ。
近寄らないようにしよう。
彼に抱きつきながら涙目で辰川を睨んだ。