第43章 女顔の男
「また、テメェか。」
ギュウギュウの朝の電車の中、誠也君があたしの後ろを睨み付けた。
その瞬間、下半身に何かが触れた。
まただ。
また、あの人だ。
今日は、タイツを履いていない。
その為、直に手が触れてくる。
「せい――」
「そうだよ、おはよん。」
頭の上から声がした。
あたしの声を遮るように。
まるで、"言わせない"というようだ。
「また、会うとか奇遇だね。それとも運命?」
手がスカートの中に侵入してくる。
「あ……。」
思わず声が出てしまった。
頬にも熱が集まる。
「どうした?」
誠也君が不思議そうにあたしを見た。
気づいて気づいて気づいて気づいて―――。
声が出ないように唇を噛み締め、ジッと彼の目を見た。
「ん?」
でも、彼は気付かない。
キモチワルイ。
彼の手じゃない手が触れるのが。
ずっと手が動いている。