第43章 女顔の男
「クソ女(あま)が、調子に乗りやがって…。」
ピキピキと男達の眉間にシワがよる。
「調子に乗るってどういうことかニャ?俺、わかんなーい。」
ガシッ―――
「ぁあっ!?ぶっ殺すゾ、テメェ!!」
真ん中にいた男が辰川の胸ぐらを掴んで立たせた。
ざわざわと乗客達が避けている。
「殺す?どうやって?無理でしょーよ。」
この状況でもニコニコと辰川は笑っている。
「うるせぇ!!」
男の拳が上がった。
ガシッ――
シュッ――
グシャアッ―――
「ふごぁっ―――!!」
一瞬の事だった。
辰川が男の腕を掴み、地面に叩きつけた。
「なっなんだこの女――」
「女?俺、男だけど?」
「は?」
グシャ――
「だから、言ったじゃん?無理だって。」
辰川は倒れた男の上に乗ると、しゃがみこんだ。
「だ…誰なんだよ…テメェ…。」
後ろにいる男達が後ずさっている。
「辰川 弘敏。ヒロ君…でいいよ。」
ニコッと男達に笑いかけた。
「たっ…辰川ァ!?辰川ってあの―――」
グシャアッ―――
「ぐふっ―――」
男の鼻に拳が入った。
辰川のだ。
男が血を吹き出す。
鼻を押さえた。
「余計なこと言わないでくれる?迷惑だから。」
立ち上がった辰川が彼等に歩み寄る。