第43章 女顔の男
「俺ね、学校でイジメられてんだ。」
車内で、あたしの隣に腰かける辰川が呟いた。
「え?…学校のトップじゃ…。」
「違うよー、こんなナリだからさ…イジメられるんだ。ホントに男子校って嫌に――。」
「嘘つくな。テメェ何者だ?ただ者じゃねぇことぐらい分かる。」
ずっと無言で座っていた誠也君が口を開いた。
「ただのパシり。」
彼は笑顔を崩さず誠也君を見た。
誠也君もまた、彼を見ている。
暫く、沈黙が流れた。
触れがたいオーラが二人の間に流れている。
プシュー―――
そうこうしていると、降りる駅に着いた。
「…せ…誠也君。」
あたしは立ち上がって彼の手を引いた。
「あぁ。」
彼は返事をすると、立ち上がって出口へ向かう。
「まったねェ。」
電車の窓の向こうで、辰川が手を振っている。
あたしは、誠也君をこれ以上怒らせないようにするために、彼を見ないようにした。