第43章 女顔の男
「桜ァ、アッキーがいじめるゥ。」
「は…はぁ…?」
辰川が腕にくっついてきた。
その瞬間、後ろから不気味なオーラが漂ってくる。
あたしは、ゆっくり振り向いた。
「…テメェ…。」
般若だ。
いや、誠也君だ。
怒りに満ちた彼の眼光が辰川に突き刺さる。
一方の辰川はというと、ニコニコと笑っている。
わざとか、それとも素なのか分からないが、この人はちょっと危険な気がする。
「アッキー、怒っちゃイヤン。」
「うるせぇ!!」
シュッ――
「あっ、百円みっけ。」
誠也君が殴りかかった瞬間、辰川がしゃがんだ。
彼の拳を宙を切る。
「百円かと思ったらコインだったァ。」
辰川は立ち上がると、キラキラと光る銀色のコインを見せた。
未だにニコニコと笑っている。
「………。」
そんな彼を誠也君は無言で見ていた。