第43章 女顔の男
結局、彼は駅のホームまでついてきた。
しかも何気に馴染んでいる。
「アッキーてさ、強い系?弱い系?」
ニコニコと笑いながら、辰川があたし越しに誠也君を見ている。
「うぜぇ、消えろ。」
また、彼を見ずに言った。
あたしはそんな彼等を交互に見た。
誠也君と辰川は正反対の人間だ。
見た目も性格も話し方も全部。
朝の痴漢は許せないけど、この人は意外といい人なのかな。
ジッと辰川の顔を見た。
「にゃに?」
猫みたいなしゃべり方で首を傾げている。
この人女だったらいいのに。
いろんな意味でもったいないかも。
更に、彼を見つめる。
「あれ?俺に惚れちゃ――」
バシッ――
「テメェ…。」
一瞬の事で、何がなんだか分からなかった。
気付けば、誠也君の拳を辰川が受け止めている。
あたしはまた、彼等を交互に見た。
「うーん、70点。」
辰川は拳を放すと、頬に人差し指を当てて首を傾げた。
「うぜぇ、つかなんでお前がここにいんだよ。」
誠也君は、離れた拳を鳴らしながら、彼を睨み付けている。
「だって俺もこの電車だもん。」
「次の電車で帰れ。」
「やだァ。」
「うぜぇ。」
「三人で一緒に帰ろ。」
「ざけんな。離れろ、失せろ、消えろ。」
誠也君があたしの手を引いて辰川から距離をあけた。