第43章 女顔の男
放課後。
「君が秋本君?」
「あ?」
校門を出ると声をかけられた。
二人で後ろを振り向く。
「あ…。」
思わず声が出てしまった。
だって、目の前にいるのは―――
「誰だ、テメェ…。」
彼が目の前の男を睨み付けている。
金髪で睫毛が長くて女顔。
朝、電車にいた"痴漢"が目の前にいる。
しかも、あの制服のズボンは、西康の制服だ。
上は黒のTシャツだが間違えない。
「西康2年、辰川 弘敏(たつかわ ひろと)。」
くわえた煙草に火をつけながら辰川が答えた。
辰川って……
「笠井の彼氏…。」
思わず声が出た。
「は?」
辰川が驚いた顔でこちらを見た。
そして、笑いだした。
「ないない、あり得ない。俺が、あの化け物女の彼氏?マジウケるんだけどソレ。」
まだ笑っている。
「一回遊んだだけ。したらあの化け物本気にしちゃって、赤髪の男倒してくれって言うからさァ。まぁ、俺も暇だしいいかなって。」
そこまで言うと、煙草の煙を吸い込む。
「赤髪の女ヤっちゃっていいって言うし。」
煙を吐き出した。
「くだらねェ。」
誠也君はそう呟くとあたしの手を引いた。