第43章 女顔の男
バン――
男が壁に手をついた。
どんどん密着してくる。
誠也君に目を向けても、人が多すぎて彼は気づいていない。
早く駅に着け!!
そう、心の中で願った。
が、男の片手がお尻に触れた。
優しく周りにバレないように触っている。
あたしは出来る限り振り向いて男の顔を見た。
女?
そう、思うくらい女の顔をしている。
睫毛も長いし、金色の髪が綺麗だし可愛い。
「………。」
彼は人差し指を口に当てるとニコッと笑った。
それからも、行為は続いた。
プシュー―――
やっと駅に着いた電車のドアが開いた。
慌てて電車を降りる。
そして、後ろを振り返った。
「あれ?」
けれど、あの人はいなかった。