第5章 出逢い
「終業式の後、サッカー部員でお別れかいするんだ。」
7月。
明日は終業式だ。
今日は午前中授業で早く終わった。
望月先輩も部活が無いため3年生の教室で話していた。
もう他の生徒はいないのか辺りは静かだ。
「そうなんですか。」
「うん、来る?」
「え?でも…あたしサッカー部員じゃないし……。」
そう言ってあたしはうつむいた。
「そんなん気にしないで。俺、みんなに朝日さんのこと自慢したいから。」
望月先輩は無邪気に笑った。
チクッ…
胸が痛む。
この笑顔が好きだった。
でもあたしが一番好きなのはあたしの頭をかきみだす大きな手。
あの手があたしを包み込んでくれるようで、
一番落ち着くあの手が大好き。
でももうあの手に会うことは出来ない。
後半年で先輩とはお別れ。
嫌だ。
会いたい。
そんな時教卓の左上に紙が貼られていた。
「あぁ…いまの担任が余所から来たばっかりだから覚えれるようにはってあるんだ。」
「へぇ…。」
あたしはそれを眺めた。
「あ……。」
"秋本"
あたしと同じ席に先輩の名前があった。
それだけで嬉しくなった。
「どうしたの?」
望月先輩が覗いてくる。
「えっ…あっ…なんでもないです。」
あたしは無意識に紙を手で隠した。
「うれしそうだったね。」
先輩は悲しそうな顔をした。
「ねぇ…朝日さん。」
「はい…。」
「君は…誰をみているの?」
真剣な眼差しで望月先輩はあたしをみた。
「君の中にいるのは誰?」
「え…。」
あたしは彼から目をそらした。
あたしの中にいる人?
わかんない。
でも、気づくと秋本先輩のこと考えてる。
逢いたいって思ってる。
口数は少ないし、恐いし、苦手だけど、彼のそばにいるといつも落ち着ける。
一緒にいたいし、逢えなくなるのは嫌だ。
嫌われるのはもっと嫌だ。
あぁ…そっか。
そうなんだ。
あたし…秋本先輩が…。
「俺を見て?」
望月先輩があたしの肩を掴んだ。
「俺は君の目の前にいるよ。だから…他の奴なんて見るな。」
そう言って望月先輩はキスした。