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レッテル 1

第5章 出逢い



夕方。

あたしはサッカー部の練習を眺めていた。

恋する女じゃなくて、彼女として。

嬉しかった。

でもそれはほんの少しだけ。

あれ?

なんでたろ?

ほんとはもっと嬉しいはずなのに。

「お前何してんだ?こんなとこで。」

そんなこと考えてると聞きなれた声がした。

「あ、秋本先輩。」

振り向くと秋本先輩がいた。

「望月先輩の練習みてたんです。」

「………そっか。気をつけろよ。」

先輩はそう言うと頭をポンポンと軽く叩いた。

「朝日さん。ごめん、遅くなって。」

練習が終わったのかグランドから望月先輩がきた。

するといっきに秋本先輩の眉間に皴がよる。

あ…そういえばこの二人喧嘩してたんだ。

交互に先輩の顔を見る。

「俺の彼女に何か用?秋本。」

笑顔で望月先輩は言った。

けれど目は笑っていない。

「………別に。」

そう言って、秋本先輩はポケットから煙草を取りだしくわえた。

「ふーん。…お前さぁ、朝日さんが好きなんだろ?」

「…え?」

秋本先輩があたしを…好き?

あたしは秋本先輩を見た。

「…………。」

先輩は無言で煙草に火を着けた。

ユラユラと煙が上がる。

「それとも、体目当て?」

「………ガキには興味ねぇ。」

煙草の煙を吐き出し先輩は望月先輩を睨んだ。

ズクン――――

あたしは胸が締め付けられたような気持ちになった。

あれ?なんで?

なんで先輩に興味ないて言われただけでこんなに苦しくなるの?
先輩のこと苦手なはずなのに。

なんだか先輩にそう言われると寂しい。

「なら、もう朝日さんに関わらないでくれる?」

「え?……あっ…。」

望月先輩は軽くあたしにキスした。

「俺のだから。」

「………。」

一瞬秋本先輩が辛そうな顔をした。

けれどすぐに彼を睨みつけ煙草を足でもみ消した。

「…………わかった。」

先輩はそう呟くと校舎の方へ歩きだした。

「あっ……。」

嫌だ。

心がそう叫んでる。

行かないで。

心が先輩を呼びとめてる。

なんで?

なんで、なんで、なんで?

あたしは先輩の背中を見つめていた。




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