第40章 回収野郎
あれから、坂下とは別行動をするようになっていた。
だから、彼が何をしているかは分からなかった。
組の金をくすねているという噂が流れていたが、加藤は信用していなかった。
彼に限ってそれはない。
信じたくない。
そんな思いが強かったからだ。
一年後―――
あの時と同じような暑い夏の日。
加藤は一人で借金の回収をしていた。
馬場団地のゴミ山を抜け、古い建物を上がっていく。
丁度、四階を上り終えた頃。
「いつもすまないね。」
「いいよ、オバチャン気にせんで。」
年のいった女の声と聞き覚えのある声が聞こえてきた。
無意識に身体を通路にある柱で隠し、様子を伺う。
「……ハル?こない所で何しとんねんアイツ。」
そこには、坂下がいた。
しかも、今から取り立てしようとした相手に封筒を渡している。
「じゃあ、また。」
坂下はそう言うと、こちらに向かって歩いてきた。
バレないように壁に身体を押し当てた。
その横を穏やかな顔をした坂下が通りすぎていく。
彼が階段を降りきったのを確認すると、先程の部屋に向かった。