第40章 回収野郎
今から7年前――
夏。
ミーンミーンと煩い蝉が泣き叫ぶ中、暑い日差しを浴びながら加藤と坂下は歩いていた。
奇抜なデザインの半袖のシャツや半ズボンでも汗がダラダラと滝のようにあふれでる。
こういう時は、海で泳ぎたい。
いや、水着のギャルに鍛え上げた肉体を見せてキャーキャー言われたい。
セカンドバックを持った加藤は汗を拭いながら妄想していた。
一方の隣で歩いている坂下は涼しげな顔をして歩いている。
なんだか加藤は彼が羨ましくなった。
今日は兄貴の代わりに借金回収を頼まれた。
忙しい兄貴の代わりに回収をすることは度々ある。
だから、珍しくもなんともない。
最も、回収しないといけない人間が多くいるのは馬場団地。
この時期のこの団地は地獄だ。
特に、ゴミからの悪臭が半端ない。
馬場団地を歩きながら鼻を摘まんだ。
「ハル、何号室だっけ?」
三棟の前で古びた建物を見上げる。
「18号室や。」
「さよか、ほな行こ。」
古いコンクリート造りの階段を上がっていく。
そして三階にたどり着いた。